百人一首 「ちはやぶる神代も聞かず竜田川…」在原業平 ほか

こんにちは。左大臣光永です。日に日に寒さが強烈なことになってきますが、いかがお過ごしでしょうか?

私は本日、池袋で「やすべえ」というつけ麺屋に入りました。トッピングでネギを頼むと、ドンッと予想以上に山盛りのネギが出てきて、ぷうんとネギ臭が卓上を満たしました。

以前、柴又で矢切の渡しを渡った先に、一面にネギ畑が広がっていて、その中の道を歩いた時の香を思い出しました。

さて、先日再発売しました「百人一首 全首・全歌人 徹底詳細解説CD-ROM」。
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さて「左大臣の古典・歴史の名場面 」本日、第718回目は、百人一首より17在原業平の歌です。静岡同志社クラブ主催の「市民古典歴史講座」の録音です。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

http://roudoku-data.sakura.ne.jp/mailvoice/Lect017.mp3

ちはやぶる神代も聞かず竜田川
からくれなひに水くくるとは

在原業平朝臣

神代の昔も、聞いたことがありません。竜田川にこんなに紅葉が真っ赤に映り込んで、その真っ赤な色がまるで、くくり染めをしたように見えるなんて。

屏風絵を見て詠んだ歌

屏風絵を見て詠んだ歌です。現実の風景というよりも、絢爛豪華な、イメージ世界の感じが漂っています。

「ちはやぶる」という言葉は、神、または宇治にかかる枕詞です。「ち」が荒々しい風。「はや」が速い・敏捷。「ぶる」がそのように振る舞う、ということで、全体としては、

激しい風が速く吹きすさんでいるように振る舞う、というニュアンスがあったけれども、後には元の意味は失われて、神、または宇治にかかる枕詞となっていきます。

なぜ、地名の「宇治」にかかるのか?おそらく氏神、という言葉からの流れかと思います。

「水くくる」は、長らく解釈が分かれてきました。現在の主流の解釈としては、くくり染めをしたように、というたとえだと。くくり染めとは、布の一部を紐で縛ってですね、染物をして、後で紐をほどくと、そこにじわーーとした模様ができる。そのように竜田川に紅葉が映り込んで、それがくくり染めをしたように見える、という解釈が現在では一般的です。

在原業平と藤原高子

作者の在原業平。若い頃に清和天皇に嫁いだ藤原高子(ふじわらのたかいこ)、藤原氏の娘であった藤原高子と密通関係にあった、ということが言われています。

これはまあ本当かどうかわからないんですけれども、一種の伝説ですが、『伊勢物語』の中に有名なことに、藤原氏の娘である藤原高子が、藤原氏が天皇に自分の娘を輿入れさせてですね、権勢をのばしていくじゃないですか。

その一環として、藤原高子という女子が清和天皇に嫁いで、後に陽成天皇を生みます。でその清和天皇のもとに嫁いだ藤原高子が、若いころに在原業平と恋愛関係にあった、ということが言われています。

しかし、その藤原高子も今や陽成(ようぜい)天皇を生み、天皇の母…いわゆる国母(こくも)という立場になります。もう雲の上の存在です。とうてい手が届かない世界に高子は行ってしまった…

その、届かない世界に行ってしまった藤原高子への、いまだ忘れえない恋心を込めているのではないか、という説も、この歌にはあります。

おそらくこう、御簾の奥からですね、藤原高子が、もう天皇の母となっている国母となった藤原高子が、そこに屏風絵が飾ってあって、御簾の向こうに在原業平がザッとひえていて、

「業平よ、この屏風絵を歌に詠んでたもれ」

とか言って、業平が、「かしこまりました」

ちはやぶる神代も聞かず竜田川…

と詠んで、まわりの人々にはこれは絢爛豪華な屏風絵を詠んだだけと思わせておいて、その中に実は、高子に対する若い頃の熱い思いを私は忘れていませんよ、ということを暗にこめた。そのメッセージを、御簾の奥の高子に伝えようとしたのかもしれません。

作者の在原業平。言うまでもなく平安一の「色好み」として知られます。色好みという言葉はですね、現在のような悪い意味ではなく、風流を愛する、粋な人間という意味あいがあります。

3733人の女性と生涯つきあった、と言われています。この在原業平ですね、たいへん『伊勢物語』の主人公のモデルになっていて、とても調べが美しい、格調高い歌が多いです。

都鳥の歌

在原業平の歌の話をすると、これだけで5時間も経ってしまいますので、今日は代表的な歌一首だけお詠みします。

名にし負はばいざ言問はむ都鳥
わが思ふ人はありやなしやと

その名も「都鳥」というお前にたずねたい。都鳥よ、都に残してきた私の愛しい人は、無事でいるだろうかどうか。

在原業平と仲間たちが、京都を出て、東海道を下り、はるか武蔵国隅田川のほとりに来ました。そこで、これから隅田川を渡ろうという時に、ああ…しみじみとみんな、旅情にひたっている。すると、見慣れない鳥がいました。これは、現在のユリカモメと言われています。

「あ、船頭さん、何ですかあの鳥は」

「ん?ああお客さん、ありゃあ都鳥ですよ」

「何ですって都鳥…」

その都鳥という言葉、都、という言葉をきいただけで、この男の胸はカッと熱くなるわけです。お前が都鳥という名前を持っているならば、都鳥という名を持つお前にきいてみたい。都に残してきた私の愛しい人は、健在だろうか。無事であるだろうかどうかと。

幕末。

隅田川のほとりに、一件の団子屋がありました。明治に入り、その団子屋が考えた。

「在原業平の歌にちなんだ団子の名前にしたら売れるんじゃないか」

それが、

言問団子。


白、黒、黄色の三つの団子が、串を通さないで置かれています。


たいへん売れてます。

このように、黄色と白と黒の串を通さない、けっこうボリュームがある。上品な甘さをもった言問団子。

素晴らしいのがですね、毎日三時くらいに売り切れる。さらにですね、ここの店のすごい所は、言問団子と言問サブレ。この二つしか商品がないんですよ。

それで、ね、明治からやってる。三時には毎日売り切れる。すばらしいなと思いますね。もう商売の理想の形を私はここに見るんですよ。

ちはやぶる神代も聞かず竜田川
からくれなひに水くくるとは

在原業平朝臣

明日は、18番藤原敏行の歌をお届けします。お楽しみに。

発売中です。

百人一首 全首・全歌人 徹底詳細解説
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お早目にどうぞ。

本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。