「住の江の岸による波よるさへや…」藤原敏行 ほか

こんにちは。左大臣光永です。

来年は酉年ですね。私は、ニワトリの声は一時期だいぶ練習したんですよ。それは平家物語で、壇ノ浦の合戦の前に、闘鶏をやってですね、占うんですね。赤い鶏が勝ったら平家につく。白い鶏が勝ったら源氏につく。で、白い鶏が勝ったので熊野水軍が源氏につくと決めた、という話を講演会で話した時に、ニワトリが戦う場面を一生懸命練習しましたので、ニワトリには思い入れがあります。

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さて「左大臣の古典・歴史の名場面 」本日、第719回目は、百人一首より18番・藤原敏行と19番・伊勢です。静岡同志社クラブ主催の「市民古典歴史講座」の録音です。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

http://roudoku-data.sakura.ne.jp/mailvoice/Lect018.mp3

住の江の岸に寄る波よるさへや
夢の通ひ路人目よくらむ

藤原敏行朝臣

住吉の江の岸に寄る波。その「よる」という言葉のように、昼間ばかりではなく、人目を避ける必要のない夜でさえも、夢の通い路を通って私に会いに来てはくれないんですね。

夢の中に現れない相手を責める歌

夢の中に相手が現れないことを責めている歌です。そんなムチャなって話ですけども。夢の中に相手が出てくるということはですね、現在の常識であれば、その本人がものすごく相手のことを想っているから、その想念が夢の中にあらわれる。これが現在の常識ですけれども。

古典の世界では、夢の中に人があらわれる、というのは、その夢の中に現れた人が、私のことを強く想ってくれているかなら、その人が夢の中に現れるんですよ。

だから、夢の中に人が現れるということは、その人が私のことを強く想ってくれているということだから、大変うれしいし、

逆に、夢の中に相手が現れないということは、その人がぜんぜん私のことを想ってくれていないので、ガックリ感もいや増しに勝るわけです。

住の江の岸に寄る波よるさへや…夢の通い路を通って私に会いに来てくださらないんですね。なかなかこの、「夢の通い路」なんてのは、ロマンチックでカッコいいじゃないですか。

この歌の意味としては、後半だけなんですよね。夜さへ夢の通ひ路人目よくらむ。人目を避ける必要のない夜でさえも、私に会いに来てくださらないんですね、歌の意味としてはこれだけなんですけれども、

その「よる」という言葉を導く序詞として、「住の江の岸に寄る波よるさへや」と。この前半の「よる」から次の「よる」を導いているわけです。こういうのを序詞と言います。

これ単なる言葉遊びではなくて、この歌のイメージとして、こう…住吉の江にざぱーーんと波が寄せ付けている、そういうビジュアル的なイメージも伴わせる、という効果があります。

住の江の岸に寄る波よるさへや
夢の通ひ路人目よくらむ

藤原敏行朝臣

作者 藤原敏行

作者の藤原敏行朝臣は、在原業平と同時代を生きた人物で、『伊勢物語』を読むと、在原業平が藤原敏行をからかっている、ような話もいくつかあって、けっこうこの二人はいいコンビだったのかな、という感じです。

藤原敏行の代表的な歌があります。

秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる

秋が来たと目にははっきり見えないけれども、風の音に秋の到来を実感させられる。すばらしい感性じゃないですか。風の音にぞおどろかれぬる、ですよ。

みなさん、こういう感性を最近持っているでしょうか。

夏から秋へかけて季節が移り変わっていく、この季節。思い出してくださいこの歌を。ぜんぜん、完璧に一字一句覚えてなくていいんですよ。なんとなくそういうのがあったわねえと、歌の心。歌の魂を、思い出してください。


難波潟短き蘆のふしの間も
逢はでこの世を過ぐしてよとや
伊勢

難波潟の短い蘆の節と節の間のような、そんな短い時間ですら、そんな短い間ですら、逢うことをせずにあなたに会えないで、この世を過ごせとおっしゃるのですか。

短い時間しか会えない!もっと会いたい!

短い時間しか会えない相手を、責めているわけです。もっと長く会いたい。一緒にいたいわと。でもあなたは、忙しい忙しいといってバタバタバタバタしている。そういう話です。

蘆。というのは、水際に生えている、あの蘆です。この蘆をよく観察すると、確かに、つくしんぼのように、節があってですね、この節と節の間が短いか長いかというと微妙な気がするんですけども、

歌の世界ではこれは短いもののたとえとされています。だから短き蘆の節の間も、こんなに短い間すら、こんな短い間すら、逢わないで、この世を過ごしてというの。もっといっぱい逢いたいのに!という気持ちです。

作者 伊勢

作者の伊勢は、『古今和歌集』の時代を代表する女流歌人です。たいへんモテました。宇田天皇の中宮温子(おんし)に仕えました。で、温子の兄と最初恋仲になりますが、これはやがて破局し、次いで宇多天皇ご自身からご寵愛を受けて、皇子を出産しますが、その皇子は幼くして亡くなり、

ついで、宇田天皇の別の皇子と結婚して、後に女流歌人となる中務(なかつかさ)を生んだ人物です。この経歴からいっても、けっこうモテモテだった感じかなと、思われます。

難波潟短き蘆のふしの間も
逢はでこの世を過ぐしてよとや
伊勢

明日は、20番元良親王の歌をお届けします。お楽しみに。

発売中です。

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本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。