難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや 伊勢

なにわがた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや(いせ)

意味

難波潟の岸に生えている葦の、その節と節の間のような、そんな短い間さえ、あなたに会うことはできないのですか。あなたに会わずに過ごせとおっしゃるのですか。こんなにもお慕い申し上げておりますのに。

語句

■難波潟 今の大阪湾の入り江。歌枕。昔は干潟になっていて葦が群生していた。■葦 水辺に生える背の高いイネ科の植物。「芦」とも書き「よし」とも読む。■ふしの間 節と節の間。「節」を「よ」とも読む。 ■よ 「世」。人生、男女の仲などいろいろな意味を含み、「よし⇒よ」の言葉の響きから葦の縁語。 ■逢はで 「逢わずて」の略。逢わないで。 ■過ぐしてよとや 過ごしてというのですか。疑問。

出典

新古今集(巻11・恋1・1049)「題しらず 伊勢」。

決まり字

なにわが

作者 伊勢

伊勢(875-940?)。古今集時代を代表する女流歌人。伊勢守藤原継景の女。

宇多天皇の中宮温子(おんし)に仕え、その兄中平と恋仲になりますが破局。その後宇多天皇から寵愛を受け皇子を生むも、皇子は早世します。

その後宇多天皇の皇子敦慶親王と結婚し中務(なかつかさ)を生みます。中務も後に女流歌人として知られるようになります。家集に『伊勢集』。

春霞立つを見すてて行く雁は花なき里に住みやならへる
(春霞をゆっくり見もしないで見捨てて北へ旅立つ雁は 花の無い里にでも住みなれているのだろうか)