山川に風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ紅葉なりけり 春道列樹

やまがわに かぜのかけたる しがらみは ながれもあえぬ もみじなりけり (はるみちのつらき)

意味

山中の川に風がかけた自然の柵、それは流れようとしても流れない紅葉であった。

語句

■山川 山中の川。「ヤマカワ」と濁らずに読むと「山と川」の意味になる。 ■しがらみ 「柵」と書き、水の流れをせき止めるために水中に杭を打ち、竹や芝を横に編んだり結んだもの。風がそのしがらみをかけたとする擬人法。 ■流れもあへぬ」「…あふ+打消」で「流れ切ることができず、ひっかかっている」。 ■紅葉なりけり 風がかけたしがらみは、実は紅葉であった、という見立て。「けり」は今まさにそれに気づいたという感動をあらわす。

出典

古今集(巻5・秋下・303)。詞書に「志賀の山ごえにてよめる 春道列樹」。

決まり字

やまが

解説

川の中ほどに紅葉葉が、かたまりになってひっかかっていて、それがまるで赤い柵のように見えたという「見立て」の歌です。

詞書にある「志賀の山越え」は京都北白河から比叡山と如意ケ岳の間を通って近江の大津へ抜ける道です。志賀(近江大津)といえば1番天智天皇が667年に都を置いた場所であり天智天皇創設の崇福寺に参詣するために都の人びとは志賀の山越えを利用していたようです。

作者 春道列樹

春道列樹(はるみちのつらき)。詳細不明です。壱岐守に任じられますが、赴任する前に病没したといいます。