百人一首の覚え方(ニ)忘れたことよりも覚えていることに注目
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「覚える」前に、「だいたいの内容を理解する」。
「だいたいの内容を理解」してから→「覚える」という流れです。
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと
人には告げよ あまの釣り船
小野篁の歌は、これから島流しになる時に、船に語りかけている歌です。「わたの原」…大海原に、「八十島かけて」…たくさんの島々を目指して、漕ぎ出していったと、「人には告げよ」都に残してきた愛しい人に告げておくれ。「あまの釣り船」漁師の釣り船よ。
作者小野篁は、遣唐使として中国にわたることを拒んで嵯峨上皇のお怒りを買い、隠岐島に島流しとなります。
今、難波の港にいて、これから瀬戸内海へ船で漕ぎ出していくんです。
その時、ふと横を見ると、漁師の釣り船がある。そこで話しかける。漁師の釣り船よ。都に残してきた愛しい人に告げておくれ。
あの男は、大海原に、島々のひしめく中を目指して、漕ぎ出していったよと。そう告げておくれ漁師の釣り船よ。
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと
人には告げよ あまの釣り船
と、こういう説明をふまえてですね…だいたいの内容を頭の中でまとめてください。
・これから島流しになる
・船に語りかけている
それぐらいでいいです。文法がどうの、活用がどうのという細かい話はいりません。だいたい、こうで、ああで、こうなったという大雑把な話を頭の中でまとめる。その上で、暗記する作業に入るんです。
まったく意味もわからず、とにかく一字一句丸暗記するというのは、無謀です。
たとえば真言のように…真言宗のお寺行くと必ず真言が掲げてありますけども。
サンスクリット語をそのままカタカナで表記したやつ。あの真言のように意味もわからず一字一句そのまま脳に焼き付けるというのも…できなくはないんてすが、もう大人になったらそういう丸暗記はしないほうがいいと思います。
子供や学生ならまだまだ脳が若いですから、丸暗記もいけるんですが。
大人になって、さまざまな人生経験を重ねているわけです。記憶も、知識も、降り積もっている。
たとえば「海」という単語一つとっても、ご自分の経験に重ねて、さまざまな思い出があり、イメージがあるわけじゃないですか。
それを活かすという意味では、一字一句意味もわからず丸暗記するのではなく、これから島流しになるんだな。そこで船に語りかけているんだなと、おおざっぱな内容をふまえた上で覚えたほうが、ずっと能率がいいはずです。
忘れたことよりも覚えていることに注目する
さて暗記する段階に移ります。
どんな覚え方をしてもいいんですが、和歌のように短いものなら、ぶつぶつ声に出して覚えるのが一番と思います。
その時、注意することがあります。
「忘れたことよりも覚えていることに注目する」
どういうことか?
テキストを開いて、
「わたのはら八十島かけて…×3」
「よし!覚えた!」
テキストを閉じる。
………
……
…
ぜんぜん、出てこない!
しかし、そこで無理やりにでも思い出してください。一言一句でも、自分の言葉で言い換えてもかまいません。
「八十島かけて…なんか、船に話しかけてる」
「ああ!これだけしか覚えられてない!
やっぱりもう年ね。若い人にはかなわないわ」
と落ち込む。これが一番やってはいけないことです。
これだけ「しか」じゃないんですよ。こんなにも!覚えられているんです。
一言一句でも覚えられたら、まず、そのことを喜びましょう。
「やった!ちゃんと覚えられてるじゃないの。
私って頭がいい。天才だ。すごい」
徹底して自分をほめましょう。
そしてわずかに覚えた記憶の断片を、逃してはなりません。
イメージとしては、こう脳ミソがぐじゅるぐじゅると頭蓋骨から飛び出して、記憶の断片をぐっちゃああぁぁぁぁッッとひっつかんで、ぐじゅるぐじゅると頭の中に引き込んで、ぐっちゃんぐっちゃんの、べっちょんべっちょんにかき回して取り込んでしまうという感じです。
「八十島かけて…船に話しかけてる、八十島かけて…船に話しかけてる、八十島かけて…船に話しかけてる、八十島かけて…船に話しかけてる、」
覚えたわずかな断片を逃さないために、しつこく、粘着質に繰り返します。しつこく、粘着質にです。淡白ではダメです。
しつこく、粘着質に!
しつこく、粘着質に!
勉強でもビジネスでも、しつこく、粘着質というのが大切な基本姿勢です。
確実にその場で、脳に焼き付ける気持ちで繰り返してください。
こうして、覚えている断片だけを、確実に頭の中に残していくんです。忘れちゃった部分はどうでもいいんです。覚えているということは、それだけ自分にとって意味があるということです。価値があるということです。それは、すごいことなんです。
学校のテストであれば、「八十島かけて…船に話しかけてる」だけだと10点とか20点でしょう。
しかし!
10点なんてとんでもない。
100万点。100億万点を自分にあげてください。
「こんなにも覚えられている!私って天才!なんて頭がいいのかしら」いちいち自分を褒めましょう。大人になると誰も褒めてくれませんので、自分で自分を褒めることがとても大切です。
こうして覚えたわずなか知識の断片を、確実に脳に焼き付けていくことによって、次回からはよりの少し進んだ段階から覚えられるようになります。何度も繰り返しているうちに歌全体を無理なく覚えられるというわけです。