夜もすがらもの思ふころは明けやらで ねやのひまさへつれなかりけり 俊恵法師

よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり (しゅんえほうし)

意味

薄情なあの人のことを思って一晩中物思いに沈んでいる。そんな夜はいつまでたっても夜明けが来ない。寝室の戸の隙間さえ、つれなく思われる。

語句

■夜もすがら 一晩中。夜どおし。 ■物思ふ 訪ねてきてくれない恋人を思って悶々とする。 ■明けやらで 夜が明けきらないで。「明けやる」は下二段動詞「明く」の連用形+「すっかり~してしまう」の意味の補助動詞「やる」の未然形+打消の接続助詞「で」。 ■閨のひま 「閨」は寝室。「ひま」はすきま。 ■さへ つれないあの人はもとより、寝室の隙間さえも、つれない。 ■つれなかりけり 形容詞「つれなし」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」。

出典

千載集(巻12・恋2・766)。詞書に「恋の歌とてよめる 俊恵法師」。

決まり字

よも

解説

自分を訪ねてきてくれない、薄情な男のことを恨みながら、悶々と夜を過ごす女の歌です。作者は男性で、しかも坊さんですが、女性の身になって歌を作ったのです。

作者 俊恵法師

俊恵法師(1113-没年未詳)。東大寺の僧でしたが出家後も歌にこだわり続け、京都白川の邸宅を「歌林苑(かりんえん)」と称して歌合や歌会を催しました。71経信の孫、74俊頼の子。『方丈記』の作者鴨長明も、俊恵法師の会合のメンバーでした。